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蝋板に鉄筆で

自由帳

小林さんちのメイドラゴン

小林さんちのメイドラゴン」を3話まで視聴した。京アニ汎用でなくかつ丁寧に作られた絵柄、音楽、田村睦心さん演じる小林の声など加点ポイントは多々あるが、最も特筆すべき点は、各作中人物間の微妙な距離感だと思っている。この点について、差し当たり小林とトールの関係に絞って述べておく。

言うまでもなく、本作では人間とドラゴンの関係が問題となっている。小林は人間であり、トールはドラゴンである。それゆえに、二人の価値観が多くの点で絶対的に異なっていることがすぐに飲み込める。1話でトールが小林にメイドとしてのスキルを披露するシーン、2話の引ったくりのシーン、3話のご近所さんとのトラブルのシーン等々その違いは頻繁に顕在化する。

価値観が違うとして、どうするのか。トールは人間界で暮らす以上、人間界のルールに合わせる方向で応えざるを得ない。トールにとっては窮屈だろう。3話の風呂のシーンで人間の身体が窮屈だと言ったトールの言葉にもそれは現れていると思う。

それにもかかわらず、小林とトールは一緒に暮らしている。トールにとって人間が理解し得ない存在なのか、あるいは理解する必要もない存在なのか、現時点では明らかではないけれども、しかしトールは小林との暮らしに居心地の良さを感じている。それは小林もそうだ。その不安定さがこの作品の面白さだし、希望でもあると思う。

 

最後に一点、私は小林とトールの性別の異同よりも異種族であることのほうがずっと重要で本質的な問題だと思ってはいるが、それはそれとしても小林とトールの性別が生物学的に同じなのは、通常人間間で問題となる男女間の恋愛関係の文脈に回収されない関係を描きやすくなるという点において非常に適切な設定だと考えている。いち視聴者としても、自分の内面にある男女間の恋愛関係の文脈に抗って物語を理解するのは決して容易いことではないから、小林とトールが同性であるという設定を有難く感じる。